思考が一時停止。


連れてく……って……

場所のことなら問題無い。うろ覚えだけど、お父さんに聞けば大丈夫。


でも、肝心なのはそこじゃなくて。


金曜日ってことは学校の帰り。

じゃあ、峰さんの家へ行く時、二人きりってこと?


「別に住所教えてもらえば行けるけど」


私の思考を切断するテノールの声。

肩に置かれた手を振り払い、こちらの方は一見せず言い切った。


「だめだめ。峰さんね、柚ちゃんにも会いたがってたんだよ。だから二人で行ってくれる方が助かるんだけどなあ」


彰宏さんの視線に答えるよう、少し膝を浮かせて口を開く。


「わ、私は全然大丈夫、ですけど……」


翠君は……嫌なのかな。


不安そうに彼を見れば、彰宏さんが笑いながら宥めている。

性格は似ていないけどやっぱり親子なんだな、と謎な所で感心する私。

やがて翠君の了承を得たのか、彰宏さんは口元に孤を描いた。



「じゃあ二人とも、金曜日はよろしくね」

「は、はい」

「……」