そういえば小学校くらいに、お父さんの付き合いで出かけていたような。

本家に直接か関わる仕事じゃないから、私でも参加できた仕事だ。


「はい。麻生家の遠い親戚の方ですよね」

「そうそう。その家の当主さんがね、翠に会いたがっているんだけど……」


チラリと隣へ視線を移す彰宏さん。

翠君はめんどくさそうに眉を寄せ「そう」と、短く吐き捨てた。


こういうことはたまに……というかしょっちゅうあること。


次期当主になる翠君の元には、お偉いさんがよく訪ねてくる。

今のように会いに来てほしい、というのも同じ類。

大人に混じって会話をする翠君はとても同い年には見えなかった。



「私が連れて行こうと思ったんだけど、生憎金曜日は都合が悪いんだ。でも翠は場所が分からないだろう?」

「知らない」

「だから、ね、柚ちゃん」

「え?」



穏やかに笑う彰宏さんは、翠君の肩に手を置きながら私を見つめた。



「翠のこと、峰さんの家まで連れてってくれないかな」