たどり着いた一室の襖を彰宏さんが開けてくれた。

軽く会釈して中へ足を踏み込めば――……見慣れた茶色の髪が、窓から流れ込む風に舞っている。


「え」


咄嗟に出た言葉は、ただそれだけで。

私の声に反応した彼は、静かにこっちを振り向いた。



「お待たせ、翠」


「別に」



パタン、と襖を閉めた彰宏さんは私に座るよう指示した。


和室の中、長方形型の机を囲んで座る体勢。

私の前に翠君、翠君の隣に彰宏さんが腰を下した。


謎なメンバーの集合に疑心が更に増していく。

翠君は特に気にしている様子もなく、無表情でどこかを見つめていた。



「早速で悪いんだけど二人とも、今週の金曜日は空いてるかな」

「空いてるけど」

「……と、私も大丈夫です」



金曜日は部活もないし、予定も入ってない。

そういえば金曜日学校行ったらゴールデンウィークが始まるな……と全然関係ないことが頭に浮かんでくる。



「良かった。その日に、行ってほしい所があるんだよ」

「行ってほしい所……ですか?」

「うん。柚ちゃん、昔晃と行ったことあると思うんだけど……隣の市の峰(みね)さんって分かるかな」



彰宏さんの言葉に昔の記憶を遡らせる、と。