……ああ、もう。何もあーちゃんのいる前で言わなくてもいいのに。

別に隠したいわけじゃないけどさ。


「……って、碧!!」

「っ、何」


ひーちゃんと話していたあーちゃんがいきなり声を上げる。

近くにいるんだから大声出さなくても聞こえるのにな……何だろう。

どうせまた変なことでも言いだすんだろう、と決めていた直後。



「お前が一緒にいたのって、柳澤美鈴?」



まさかのフルネームを口にされ、ぎくりと身体が反応した。



「……誰それ。飛鳥知ってるの?」

「知ってるってか有名人だろ!一つ上の先輩でずば抜けて綺麗だった人だって」

「そんな人いたんだ……」

「や、まだ確定じゃねーけど。陽向からの目撃証言でそうかもって思っただけだし」



やばい。そういう情報、あーちゃん詳しいから。


実際その言葉の通りなんだ。

誰が見ても、美鈴さんは美人と答えるだろう。

人気があるのもクラスのヤツが騒いでたから知ってる。


……そんな人と一緒にいた僕って、どんだけ不釣り合いなんだ。



「碧、マジで一緒にいた?」



真剣な表情のあーちゃんに誤魔化しは聞かない。


それに、ここではぐらかしても『じゃあ誰といたんだよ』ってなるのが見えている。

無駄に足掻くのは見苦しいし、さっさと白状しておこう。