僕が、柚以外の誰かを好きになる日なんて、来るんだろうか。

叶わないと知っていながらも約10年、一番近くで見守ってきた大事な柚。

今までも一度たりとも柚以外を瞳に映さず、ただただ生きてきた自分。


……でも、そんな事実を知っていたら誰も僕を好きにならないと思う。



「僕の性格知ってたら、誰も告白なんてしないですよ」



どれだけ重いんだ、って笑われる始末。

人の考え方はそれぞれだけど、流石にここまでくるとそう思われるだろう。


「……そんなの分からないわよ」


そう呟いた直後、左腕に何かが触れる。


え?と思い顔を傾ければ、ぎゅっとしがみついている美鈴さんの姿。

元々身長が高いし今日はヒールを履いているからか、頭の位置はほぼ同じ。

ふわりと香る甘い匂いが、一瞬頭をシンクロさせた。



「美鈴さ、ん?」

「っ碧君は、自覚がなさすぎ!」

「え?」



何のこと……?



話の焦点が読めずに眉を寄せると、きっと顔を上げた美鈴さんの瞳と視線が重なる。

吸い込まれそうな綺麗な瞳に、戸惑いを含んだ自分の顔が映った。