クロスロード


「……だったらこっちはどうですか?」


クローバーとは対照的、更にシンプルな十字架のネックレスを手に取る。

美鈴さんは眉を寄せ不思議そうに笑った。


「あんまり柚さんっぽくないんじゃない?」


彼女の言ってることは正しい。

これじゃあシンプルすぎるし、大人っぽいから柚には似合わない。

でもきっと、美鈴さんなら似合うはず。


……とりあえずこれは、候補にしておこう。


適当にその場を誤魔化して再びアクセサリーを選んでいると「ねえ」、美鈴さんが口を割る。



「碧君は今も、昔のままなの?」


「……え?」


「柚さんのこと、昔と同じように想ってる?」



フと顔を美鈴さんに向けると、さっきとは違う、真剣な眼差し。

どう答えていいのか判断できなくて暫く沈黙に浸ってしまった。



……ずっとずっと想っていた人を、忘れるのは簡単じゃなくて。



違う男の婚約者になってしまった今も、意識せずに接しているわけではない。

必ずどこかで、10年間の想いが自身を揺るがしているんだ。


あんなにも好きだったんだから。