―――誰かの力を借りるのはここまで。
周りを見ていなかった過去から、一歩踏み出さなきゃいけない、と身体が反応する。
貰ったネクタイだって男物だし、きっと店に入り辛かったと思う。
……それに、僕が自分で選ばなきゃ、意味がない気がするんだ。
きょとんとしてる柚にもう一度謝り、アクセサリーショップへ移動する。
僕から見たら同じような物ばかり並んでいるように見えるけど、ほんの少しだけ違うところがあるらしい。
隣でピアスを選んでいた人が「どっちがいいと思う?」と、似てる二つを手に持ち友人に話しかけていた。
と言うか、一口にアクセサリーって言っても凄い数があるんだな……
ファッションビルの一つの店だけでこんなにあるなんて、どれを選んでいいのか益々分からない。
そもそも、どんなアクセサリーを付けるのか知らないのに。
余りにも考えなしな行動に浅く溜め息。
……もう一度出直そうかな。
そう思い、女性ばかりで気まずい店をそそくさ出ようとした時、
「もしかして、碧君?」
聞き覚えのある声に名前を呼ばれ、後ろを振り向けば。
異常に顔が整い、綺麗なストレートの黒髪の持ち主。
普段は見ない私服姿だからか、一瞬誰か分からなかった。
「美鈴(みすず)、さん」
―――まさかこんなところで出くわすなんて。
彼女の隣には誰もいなく、一人で買い物に来ているのかな、と推測する。
「久しぶり、ね」
そう言われてみればそうだ。
3月に美鈴さんが卒業して以来会っていないし。
まあ、元々頻繁に会う関係でもないんだけど……

