「指輪……とか」
「……指輪?」
それ翠限定だよね……と口から出そうになった言葉を必死で紡ぐ。
危ない。今翠の名前は禁句だ。
何で僕こんなこと聞いちゃってるだろう。
あー、もう。指輪くらいプレゼントしてやればいいのに。
「わ、分かった。とりあえずアクセサリー見てくるよ」
現在地から左の方へ向かうとショップがある。
チラリと見えたそこに男の姿は見えなくて、今からでも気が滅入りそうだ。
でも、ここに来ようと思ったのは僕だし。
それにアクセサリーなら、あの人も喜んでくれそうだし。
「アクセサリーならあっちの方にもあるよ」
と、慣れない場所にいる僕を誘導してくれる柚。
いつもならそれに着いていくけど、今日はだめだ。
「ありがと。でもごめん、ここから別行動にしない?」

