「柚、水やり?」
すぐ傍に立ち声をかけると、顔を上げて僕と目を合わせる。
「碧(あおい)君」
幼馴染みのようで違う、曖昧な関係。
柚と僕はずっと一緒だった。
ずっと一緒にいる過程の中で、普通の人に対する想いとは違う感情を抱いていた。
が、皮肉なことにそう上手く事はいかない。
彼女は僕ではなく、僕の親戚である本家のヤツを選んでしまった。
そういえばヤツと柚が婚約して3ヶ月……くらいが経つ。
最近どうなんだろう、と疑問を抱いた時、フと柚の虚ろな表情が映る。
「……柚?何かあった?」
「え?ううん、何もないよ」
絶対嘘だ。
これも皮肉なことに、ずっと一緒にいたせいかこういうのはすぐ分かってしまう。
ていうか、こういうのって僕じゃなくて婚約者の仕事だよな……と自分に言い聞かせた。
「それより碧君、どこかに出かけるの?」
「あ、ああ、うん。買い物行こうと思って」
「そっか……私も行っていい?」
「え?」
思わぬ返答に訊き返す。
柚と出かけることは珍しくない。寧ろ、よく行っていた方だと思う。
でもこんなタイミングで誘われるのもおかしい。
そもそも柚がアイツとが婚約してからは出かけたりしなかった、のに。
「別にいいけど……翠に悪くない?」