「……後で挟んで?」



その言葉を最後に肩から頭を離して、翠君の真正面へ移動する。

相変わらずの無表情。



……ねえ、その表情、ちょっとだけ崩してほしいよ。



白い肌に茶色の髪。鎖骨が見えるくらい肌蹴たシャツが瞳に焼きつく。

畳に膝をつき腕を伸ばして、彼の首へと抱きついた。


ふわりと頬を掠める髪も、細い身体も

その全てが私の神経を狂わせていく。



「好きだよ、翠君」

「……あっそ」



素っ気ない返事。

抱きついている私を抱きしめ返してくれることもない。


本当なら抱きしめ返してほしいし、たまには甘い言葉も言ってほしい。


欲を言えばキリがないけど、こうして触れられるだけでもいいの。

離れていた10年間は余りにも長くて、すぐには距離を縮められない。



一度知ったら最後、なんて、自分によく言い聞かせていたけど

……知ってしまったら、更に上を求めてしまう。



「キス、していい?」