……そう、ですか。


結構勇気いる行動だったのに!ちょっとは……ほんのちょっとでもいいから、そういうムードにしたかったのに!


行動だけじゃ翠君に伝わらない。

甘えるのって難しいんだなあ……実感。


「ね、寝ないよ」

「なら頭どけて」


精一杯の努力も水の泡。


二人っきりなのに、どうしてかなあ。

資料室の時もそうだったけど、私達の間に恋人のような甘い雰囲気は訪れない。

それが凄く嫌ってわけじゃないの。一緒にいれるだけで嬉しいし、好きだから。



……でも今は、そんな余裕がない。



「だったら翠君も、本、閉じて」



頭を肩に預けながら静かに呟く。


ページを捲ろうとしていた手が止まり、同時に時が止まった。

翠君が動かないのをいいことに文庫本を奪う。

パタン、とそれを閉じて畳の上に置いた。



「……それ、しおり挟んでないんだけど」



呆れたような、困惑したような。

溜め息混じりの声が耳元で聞こえ、慣れない感覚が背中を走る。