クロスロード


「別に誕生日なんかどうでもいいんだけど」

「ど、どうでもよくないよ!私にとっては、一年で一番大切な日なんだもん」



だって翠君が、生まれてきてくれた日なんだから。

小さい頃からずっと翠君と碧君とは『生まれた時から一緒にいるのよ』と聞かされてきた。

だから二人の誕生日は私にとっても大切な日で。

けど翠君の誕生日を最後に祝ったのは、10年も前で。


それでも今年は彼の誕生日を祝えることができたはずだった。

少なくとも去年とは違う。遠くから見ているだけではなくなった。


……なのに。

誕生日プレゼントどころか当日におめでとう、も言えなかった。

しかも一緒にいたのに。

ただただ押し寄せる後悔の波に表情は次第に曇っていった。




「……ごめんね。大切とか言っときながら、祝えなくて」

「だからいいってば。祝ってほしいなら自分で言ってると思うし」

「や、なんかそうじゃなくて、」

「なに?」

「え、えーと……じゃ、じゃあ欲しい物!翠君、欲しい物ないかな?」

「は?」