クロスロード


「……っわ、綺麗…!」


さすが最上階。

フチに手をついて辺りを見渡せば、写真に収めたような風景が広がっていた。

家のベランダからじゃ絶対に見れない。

そういえば碧君や日高君は写真部だった。これ撮ったら凄くいいだろうなあ。



「凄いね。夜だったらもっと綺麗だったかな」

「多分」

「……翠君、景色にあんまり興味ないの?」

「別に、好きでも嫌いでもないけど」



じゃあなんでこんなとこに…?


私は最上階からの景色が見れて嬉しいけど、翠君は何が目的なんだろう。

ずっと締め切ってたから外の空気が吸いたくなった、とか。

ありえなくもない。昨日の夜から窓開けてなかったし。



「あのさ、」

「うん?」



フチついた手はそのまま。

顔だけ翠君の方へ向けて返事をする。

彼も私と同じように景色を見ていたけど、声をかけた瞬間私の方へ向き直った。

表情はいつもと変わらない。声のトーンも普段通り。


けど、どこか変化を感じたのは、私たちの間に流れている空気。

何を言われるんだろう、と想像すると背中を緊張が走った。