クロスロード


一人であたふたしている私に呆れたのか、翠君はバスルームのドアを閉めてベッドのフチに腰掛けた。

着替えていて立ちっぱなしだった私も彼につられてベッドに座る。

彼とは反対側のフチに。



「……、」



一緒の部屋にいるのに背中合わせって何なんだろう。

だったら隣にいけば、って思うけど恥ずかしくてできない。

前の時は朝起きたらいなかったし、すぐに本家へ向かったから余韻に浸っているヒマはなかった。

でも、今は違う。


サイドテーブルに置いてあるデジタル時計には8:00と表示されている。

すなわち、チェックアウトまであと2時間はあるということで。

余韻も何もヘタすれば仮眠をとるくらい時間は残されていた。


気まずい気まずい気まずい……


もうどうしよう。あ、そういえば朝ご飯食べてないなあ。時間もあるし食べに行こうって誘ってみようかな。

いやでもその前に私もシャワーくらい浴びようかな。

なんて、一人計画を練っていたとき。



「ねえ」

「っは、はい?」



フイに響いたテノール。

昔の癖でつい出てしまった敬語。

バッと後ろを振り向くと、数秒後には彼もこっちを向いた。


太陽の光を浴びて茶色の髪が輝く。元々白い肌はさらに白くなっている。

第二ボタンまで肌蹴たシャツに昨日のことを思い出して、無意識に目線を逸らしてしまった。