「あのですね、その、俺が笑ったのは、あなたの表情に意外な面があったからです」
「……どういうこと?」
「えー、と……拗ねた表情っていうか」
そこまで言うと美鈴さんはハッとしたように目を開く。
が、すぐに「勘違いじゃないかしら」と普段通りの冷静な顔になる。
あくまでシラを切るつもりらしい。
そのギャップに耐えきれなくて、またもや笑みが零れ落ちた。
「ちょっと、何笑ってるの!?」
「あは、はははっ……わ、笑うなっていう方が無理ですよ…っは、」
人気のない公園に乾いた声が響く。
何がおかしいのかすらわからなくなってきた。
第一印象は高嶺の花、の彼女の意外な一面がこうも笑いを呼ぶとは。
まあ、俺が勝手に一人で盛り上がっているだけだけど。
目尻に薄っすら涙が滲んできたとき、「碧君の笑った顔はじめて見た」という彼女の声にピタリと笑みは止む。

