そう、忘れもしない去年のクリスマス。


翠と柚が一緒にいる所を目撃したとき、何故か俺は敷地内で出くわした美鈴さんといた。

そして去り際に残された一言。



『眼鏡、してない方がいいと思う』



そのコトバに眼鏡をかけていないことに気づき、同時に疑問を抱いた。

お手伝いさんすら見分けがつかないほど翠に似ているのに、出会ったばかりの彼女が気づくなんて。

最初っから翠ではなく『碧君』と呼んでいたし……


なんて考えていると、フイに美鈴さんは妖艶に笑った。

その笑みに何人の男が釘付けになるんだろう。



「碧君、結構しつこいわね」

「え、……は?」

「言ったわよ、あたし。なんで本物の碧君が見たいって言ったんですか、って訊かれた時に」

「……、え、と」

「それと同じ理由」



「何度も言わせないでよ」と、少し不機嫌そうに彼女はきゅっと眉を寄せる。


その光景は大人っぽい美鈴さんには不釣り合いで、フッと無意識に笑みが漏れた。

が、笑ったことに対して更に不機嫌度は増してしまった。