クロスロード


「どうです、軽蔑したでしょ?」


はは、と乾いた笑みを張り付けて嘲笑う。

壊れたロボットのように話し続けた俺は、フイに現実へと戻り彼女の顔を見る。


すると、こっちを眺めていた彼女はゆっくりと足を動かした。

一歩、一歩。俺が座っているベンチへ近づいてくる。

ベンチの目の前に来ると足を止め、座っている俺を無表情のまま見下ろした。

そして、口を開く。


「なにが?」と。


……そのコトバに自分の顔から笑みが消えていくのがわかった。


ポカンと開きっぱなしの口。

予想外の返事に戸惑いを隠せない。



「いや、だから今の聞いてませんでしたか?」

「聞いてたわ。でも、どこで軽蔑すればいいのかわからない」

「は?」



彼女は怒りを見せずにただただ喋り続ける。



「碧君は自分のこと悪く言いすぎ」



言っている意味がわからなくて、眉間のしわが深く刻まれる。

そんな俺にはお構いなし、といった風に美鈴さんは冷静だった。