クロスロード


その時、僕は何を言ってるんだろうと思った。


ついさっきまで委員会に出るのすら嫌で嫌で仕方がなかったのに。

せっかく部活がないのに、と憂鬱な気分だったのに。

僕自身も驚いていたけど、彼女はそれ以上驚きを表した。


『来週の放課後だけど……、』


でも、と続きだそうな言葉。

チラリと手元を見れば講習会で使うであろう資料が沢山かさばっていた。

委員は来週から作るかもしれない。


けどこの人は違う。今から一人で、作るつもりなんだ。



『――手伝います』

『え?あ、ああ、どうも。じゃあ来週の月曜日に、』

『今日ヒマ、なんで』

『? プリントは来週作るから、今日は帰っていいわよ』

『でも今から作るんですよね?』



僕の言葉に黒髪の先輩はポカンとした。

あ、そういう顔もするんだ、となぜか緩む口元。

なんでわかったの?と訊きたげな視線に彼女の手元から資料を半分奪った。


『一人じゃ大変ですよ。僕でよかったら手伝います』