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『ついてないな……』
ボソリと吐いた独り言は肌寒い廊下に溶けていった。
まわりからは『今日帰りどこ行くー?』と楽しそうな声が聞こえてくるのに。
ああ、はいはい。駅前にできた新しいカフェか。そういえば柚が行きたいなんて言ってたな。
……って、また柚のこと考えてるし。
『はあ……』
『ちょっと橘君!ため息つくのやめてくれない!?』
こっちまで気分悪くなる!と大声で叫んだのは同じクラスの女子。
うげ、と言いそうになった声を寸前でのみ込む。
クラスの女子はギリギリまでスカートを短く下り、思いっきり脱色したであろう明るい髪をかき上げた。
『あたしだって嫌なんだからね。せっかく今日は部活休みなのに……』
そりゃあそうだろうね。この学校は文武両道を目標にしてるから、部活が休みの日なんてテスト前くらいしかない。
が、今日は職員会議があるらしく殆どの部活を休みにしたのだ。
勿論僕の所属する写真部も例外ではない。
あーちゃんに部活がないことを伝えたら飛び上がる勢いで喜んでいた。
そんなに嬉しいか?いつもロクに活動してないのに。……ま、あえて口には出さなかったけど。
みっちゃんは『わかった』と頷き、ひーちゃんに関してはいつもと同じ無表情。
たった4人しかいないのに個性が強い部活だと思うのは僕だけかな……

