ざあっと心地よい風が二人の間に吹く。
それに伴い、既に葉桜となったモノが儚く舞っていた。
舞い散るミドリの葉。自分の茶色の髪も表情を遮るようにバサッと乱れる。
――彼女が何と言ったのか、一瞬で理解することは不可能だった。
自分で言うのもなんだけど、僕は常に気を張っているから小さいこともあまり見落とさない。
イコール、物事を聞き返すことも数少ない。
なのに理解ができない。ちゃんと聞いていたはずなのに、現状に追いつけない。
それはきっと、生まれて初めて口にされたフレーズだから。
「……誕生日?僕の?」
「そう」
僕のこれまでの誕生日はほぼ柚と過ごしていた。
でも、一緒に過ごすと約束したから過ごしていたのではない。
ただ単に学校が休みだから。お互い家にいたから。
そんな他愛もない理由で一緒にいただけだった。
いつの間にか僕の中で誕生日の存在など、特別なモノではなくなっていたのに――…
彼女は『一緒に過ごしたい』と口にした。
「どうしてあたしがそんなこと言うのか、わかる?」
わからない、と答えたらウソになるかもしれない。
けど確信が持てない。僕達の関係ははっきりとした言葉で枠付けされていない、から。

