知ってるわけない、よな。逆に知ってたら吃驚だ。
忘れたいのに忘れられない。
忘れることなんて、できないんだ。
「明日は柚の誕生日なんです」
翠の誕生日を忘れようとしても、柚の誕生日を忘れることなどできるわけなかった。
そうなると必然的に翠の誕生日も覚えてしまう。1日違いなんて、卑怯だ。
1日にプレゼントを渡すことはなくても次の2日には毎年必ず渡していた。
そう。この前美鈴さんへのネックレスを選んだように、女の人用のお店へ入って。
「……明日?柚さんの誕生日が?」
「はい」
毎年毎年、その日にちゃんとプレゼントを渡していたけど
どうやら今年は無理みたいだ。
18回目の誕生日を一緒に過ごすのは僕じゃない。
――僕の役割じゃない。
「……そう。1日違いじゃ忘れる方が難しいわね」
「はは、そうですね」
「碧君は誕生日いつなの?」
「5日です」
「え、今月の?」
「はい」

