クロスロード


教えてあげようとしたのは、柚が悲しむと思ったから。

後から気づいてまた泣きそうになる顔を見たくなかったから。


それに、翠だってきっと、柚に祝ってもらうのを期待しているんじゃないかと思ったから。



アイツの考えてることなんてわからない。わかろうとも思わない。

翠のこと好きか、と訊かれたら曖昧な返事しかできない。

そんなヤツだけど……いや、そんなヤツだからこそ教えようと思った。



「麻生君の誕生日のこと、碧君は覚えてたのね」

「忘れられたら忘れたいですよ」

「そこまで?」

「美鈴さん、知ってましたか?」



隣に肩を並べている恐ろしいほど顔が整った彼女。

キョトンとしてる表情までも絵になってしまう。

そんな彼女に薄く笑い、視線を捕えた。



「明日の5月2日が何の日か」

「……?」