「まさか麻生君が電話に出るとは思わないわよね」
「はい」
「親切に電話してあげただけなのに、……って?」
「本当ですよ」
柚も翠も、僕が何の用事があって電話をしたのかわかっていないだろう。
翠に関しては何を考えてるかわからないから、もしかしたら予測できてるかもしれないけど。
「まさか今日、麻生君の誕生日だったなんてね」
――そう
今日はアイツの誕生日なんだ。
まだ僕等が幼かった頃、毎年5月1日は本家でパーティーを開いていた。
だから今日の昼休みに柚が用事があると言った時、僕は『ああそうか』と納得した。
翠の誕生日だから一緒にいるんだな、と誰もが推測する内容で。
なのに柚の用件は峰さんの家に行くとのこと。
その時にもしかして、と思った。
柚は翠の誕生日を忘れている。いや、今日が5月1日なのを忘れているのかもしれない。
昔の僕ならそのままにしていた。わざわざ柚に教えてやるほど優しいヤツじゃない。
でも……、
「……はは。せっかく教えてあげようとしたのに、切られちゃいましたけどね」

