クロスロード


――それ以上の言葉はなかった。


確かに翠君の言う通り、あの日身体はだるかった。

起きたら感じたことのない痛みに襲われるし、寝る前も痛かったけど……

でもそれは私が初めてだったから、だと思うんだけど。



「それに、もうブレーキ利かなくなる」



何が、なんて訊かなくも分かった。

身体中の熱が顔に集まって、触らなくても分かるくらい熱くなる。

ぎゅっと胸の前で手を握った時に聞こえた心臓の音は、異常なくらい大きかった。



「……それでもいいよ」



私はこんなことじゃ諦めないの。



「痛かった、けど……嫌な痛みじゃ、ないから……っ」



……自分で言ってて恥ずかしくなってしまった。

これでもオブラートに包んだつもり、なんだけどなあ。



ちゃんと言葉にしないと伝わらないと思ったから。

本当の気持ちを一つも誤解せずに知りたいと、思ったから。