クロスロード


「初めての時からずっと、もう一度触れてほしかったよ……っ」



きっと、こういうことを知らなければ

こんな風に積極的に求めないかもしれない。



けど私は知ってしまった。

本来なら幻にしなきゃいけない、一夜だけの出来事だったはず。

それでも婚約者という関係になれたから、幻になんてしなくてもよくなった。



だから……本当はずっと

もう一度あの夜を、蘇らせてほしかったんだ。



「翠君は私のだもん、私だけがこういうことできるんだもん……っ」



いつの間にか溢れていた涙が翠君の頬に零れた。

まるで翠君が泣いているみたいに。


もうめちゃくちゃ。


でもね、これが

私の愛情表現なの。



翠君が何か言いかけようとしたけど、すかさず唇を私のソレで塞ぐ。

そのまま手を首元に移動させてネクタイを解いた。

しゅる……と解けていく音が耳に残る。



「……っは、やめ、っ」



がばっと引き離された顔。

同時に翠君が起き上ったせいで私は退くざるを得なくなった。