クロスロード


目を見開いて私を見る翠君。

貴重だな、吃驚している顔は……

それもそっか。無理矢理キスはあるけど、押し倒したのは初めてだもんね。



「……なに、してんの」

「押し倒したの」

「そうじゃなくて、」

「キス以上のことするためだよ」



こんな状況にも関わらず、私の頭には例の雑誌が流れてくる。


『最近は女の子が押し倒す時代ですよね』


……今なら同意できる。

待ってるだけじゃだめなんだ。好きなら自分からいかなきゃ。

いつもはこんなこと思わないのに、今日はおかしいな。



「私、翠君が好きだよ。傍にいてくれるだけで嬉しいの」



でも、と言葉を続ける。



「それだけじゃもう、我慢できない」



好きだから触れたい。温度を感じたい。

普段とは違う顔を見せてほしいの。


その顔を知ってるのは私だけだと、特別な権限がほしいの。