でも、そっか。なら良かった。
あの日からずっと心に引っかかっていたけど、すっと闇が晴れていく。
訊きたかったのに訊けなくて。
いつまでもズルズル悩みっぱなしだった。
「だから俺とソイツはそういう関係じゃないわけ」
その言葉が、ずっと聞きたかった。
安心させてほしかった。否定してほしかった。
翠君は私が見ていることを知らないのにこんなことを思ってしまう。
私は相当心が狭いみたいだ。
「良かった……」
重い鉛が取れた身体は、何も考えない内に行動にでた。
握った手を離して翠君の身体に腕を回す。
ぽす、とネクタイが顔に当たる。
私って考えナシかな。
さっき拒否されたのにも関わらず懲りずにまた触れたい、なんて。
――翠君は私の身体に触れようとしたけど、
触れる直前で手を引き戻した。
「なんで?」
がばっと顔を上げる。
私が見ていたとは思わなかったのか、表情が一瞬崩れた。

