嫌われたのかと思っていた。
嫌いだから、私が触れようとしたのを拒んだのだと。
なのにどうして携帯を奪ったの?
どうして私の腕を引いて隣に座らせたの?
態度でも言葉でも翠君は私に意思を教えてはくれない。
長い沈黙が続く中、ソレを破ったのは意外にも彼の方だった。
「碧、何の電話だったわけ」
「……よく分かんない。何か言おうとしてたけど…」
今日、と言いかけていたけど何なんだろう。
私の返答に「そ」と短く返事をすると、再び会話は途切れて気まずい空気が流れる。
フと翠君が目を逸らした瞬間、それとほぼ同時に手を握った。
逃げちゃやだ。誤魔化されちゃやだ。
――本当は私のことどう思ってる?
「……私、訊きたいことがあるの」
ずっと奥に閉じ込めていた記憶。
運がいいのか悪いのか、偶然遭遇した事実。
あの日は碧君に凄く気を遣わせてしまった。

