『ごめん、今ちょっと平気?』
「うん……」
『僕さ、柚に言おうとしてたことあるんだけど』
「え?」
何だろう……と考えたけど、フイに思いだしたのは昼休みの出来事。
そういえばCDの件を言いに来てくれた時に、何か言いかけていたような。
「もしかして昼休みのこと?碧君が私のクラスに――、」
そこで途切れてしまったのは言葉につまったからじゃない。
私が碧君、と口にした瞬間、翠君が大きく反応したからだ。
え?と戸惑ったけれど、電話越しの碧君はさっきと変わらない声色で続ける。
『そうそう。柚、今日が何の日か忘れてるよね。一応言っとこうと思って』
「え、今日?――……っ、」
何が起きたのか、すぐには理解できなかった。
私が耳に当てていた携帯は次の瞬間翠君の手にあって。
碧君の声は聞こえなくなって。
声が出なくて唖然としていると、翠君は携帯を耳に持っていく。
『だから今日は、』
「勝手に電話してこないでくれる」

