「……どう、して」



ここまで嫌われていた?

そんなにうっとおしい存在?

彼の言いたいことは一つも分からない。

無意識に肩に込める手に力を込めた時、




「触るな」




そう言いながらばしっと振り払われる手。

行き場を失った手はだらんと項垂れる。



……私はどこかで、期待をしていた。

そういう雰囲気になれば、きっと彼だって私を受け入れてくれるんじゃないかと。

私が態度に出せば、応えてくれるんじゃないかって……



でも違う。そんなんじゃない。

触れることすら許されなかったなんて、思いもしなかったんだ。




「部屋、帰れ」




じわりと潤む視界。

翠君の顔がぼやけて見えない。



……帰らない、なんて、喰いつく勇気はどこにもなかった。