「もっと翠君が欲しいよ」



翠君が私を見た瞬間、絡まる視線に呼吸が苦しくなった。

近いのに遠い。

一緒にいれるようでいれない。

もどかしさと寂しさが募り、目頭が燃えるように熱くなる。



「……っ、」



ぎゅっと目を閉じて顔を近づける。

もう何とでもなればいいんだ……、自虐的な考えすら脳を駆け巡る。


あと少しで唇が触れ合うという時、唇に触れたのは冷たい何か。

不思議に思って目を開ければ、それは翠君の手の平で。

言いかえれば、私がキスしようとしたのを防がれたのだ。



「な、んで、」

「触んないでくれる?」

「……え…、」



冷たい視線に身体が凍りつく。


それはもう、私の存在すら否定するように聞こえて。

私は自分の目を、耳を疑ってしまった。