「あの男もだめね」
ほんとだよ、と口に出さずに同意。
あの日、何でファッションビルに女の子といたのか知らないど、アレはないだろ。
仮にも柚は婚約者で翠のことを想っているのに。
やっぱり翠は何を考えているのか分からない。
「柚は柚で峰さんの家に行くとか言ってて――……」
そこまで口にして思い出す。
僕が昼、柚に言いかけたことを。
『え、だって柚、今日は――、』
そうだ。続きを言おうとしたらクラスの女子に遮られて。
……肝心なことを、柚に伝えられなかった。
「美鈴さん、今日って5月1日ですよね」
「? そうね」
柚はきっと忘れてる。あんな状態じゃ、絶対に。
今ここで電話して伝えるべき?

