一応礼は口にしたものどうしたらいいのか分からない。

顔のすぐ下には彼女の頭。

艶のある黒髪からふわりと甘い匂いがして、くらっと脳に刺激を与えた。


……ああ、そっか。

美鈴さんって女の人、だもんな。


いや、知ってたけど。ちゃんと分かってたけど。

――こういう時に思い知らされる。



「……はい、これでヨシ」



満足そうに笑うと、ゆっくりと僕から離れていく。

時間にしてみれば数秒のことだと思うけど、僕にはその何倍にも感じられた。

どくんっと脈が大きく揺れる。


何だ、これ。



「っあの、僕渡したい物があるんです」



不自然に逸らした話題。

このままの流れが気恥ずかしくてこうなった……ってことはバレていないだろうか。


美鈴さんはキョトンとしていたけど、すぐに笑顔で「なに?」と返してくれた。

大人のヨユウ、ってやつかな。



「その……今更で悪いんですけど」



鞄の中を漁り、朝入れてきたプレゼントを見つける。

あの日、美鈴さんと一緒にアクセサリーショップに行った時に買ったものだ。