逃げるように映画館を抜けだしカフェの椅子に座りこむ。

映画が終わった直後、ひーちゃん達が立ち上がるより先に劇場を出て猛ダッシュをした。

美鈴さんには訳を話していないから彼女は不思議がっている。

言えるわけない。あの二人は部員なので顔を見られたくなかったんです、とは。



――それに、ひーちゃんには美鈴さんといる所を前に見られている。

また見られたら厄介だな、と判断し、今ここにいるわけで。

そんな僕を見て、甘そうなココアを飲みながら美鈴さんはくすっと笑った。



「碧君って、意外とコロコロ表情変わるのね」

「いや、僕もロボットじゃないんで」



多分、美鈴さんはこういう反応をしてほしいからああ言った、のではない。

けどなんか恥ずかしくて、露骨に話題から逸れたツッコミをしてしまった。



「……あ、碧君」

「何ですか?」

「それ、ネクタイ捻れてるわよ」

「え?ああ、さっき走った時かも……」



捻れたソレを直そうと指を伸ばす。

が、それより先にすっと伸びた細い手が、僕の指の行き場をなくした。



「、え」

「じっとしてて」



身体を前に乗り出し、少し腰を浮かせながら僕のネクタイに触れる美鈴さん。


「あ……どうも」