クロスロード


「ひ、ひとっ!人いっぱいいるから……っ」


本当にその通り。


話題作の映画なんだから必然的に客は増える。

簡単な方程式だろそれくらい!!

数学が苦手な彼女もこれは理解できているらしい。



「ふ、まわりもこういうことしてるよ」



嘘つくな!後ろの席にいる僕はそんなことしてない!


男……というかひーちゃんは何ともない、といった風に言いのける。



何ていうか、アレだ。

ひーちゃんと僕はあーちゃんのオープンすぎる性格にいつも呆れきっているけど

今のひーちゃん、アイツと大差ないと思う。

それに、意外と奥手なあーちゃんはこういうことできない気がするから、今じゃひーちゃんがトップだよ。



……って、また変なこと考えてる僕。



ちょっと前だったらこの場でもつっこんでいたかもしれない。


けど、今は美鈴さんもいるし、何よりここで口を挟んだらひーちゃんが何をするか分からない。

イコール、知らないフリをするのが一番だ。



「……ぁ、やめ…っ」

「なら俺の家行く?」

「ちがっ……え、映画見に来たんだから……」

「もう飽きちゃったんだよね」