「……っ、え」
フイに掴まれたブレザーの裾。
何だろう、と、美鈴さんを見ればスクリーンに目配りをした。
続けてスクリーンを凝視すれば、――ぴしっと効果音がつきそうなくらい固まってしまった。
スクリーンの中、恋人同士であろう男女の濃いラブシーン。
さすが映画館だけのことはある。ド迫力だ。
純愛とかいいつつこういうシーンもあるのかよ、と声に出さずにつっこみを入れた。
そんなことより、スクリーンの中で盛り上がっているせいか、まわりの客までそういう雰囲気になっている。
フと前にいる例のカップルを見れば、案の定キスしている真っ最中だった。
……うげ、見なきゃよかった……
チラ、と美鈴さんを見ると苦笑している。
そりゃあ苦笑したくもなるよな……
迷惑なカップル……と呆れていると、
「ひ、ひなた…だめだってば……」
――なぜか聞き覚えのある名前が、はっきりと耳に入ってきた。

