「碧君は柚さん以外の女の子と、出かけたことある?」
ぴくり、と財布を掴もうとした指が止まる。
……吃驚した。いきなり柚の名前が出てきたから。
実際さっき頭の中では出てきたけど、彼女が口にするとは思わなかった。
「――、ないです」
そもそも僕は柚以外の女子と交流がない。
……写真部の女子二人は別として。
「……柚さんの前でも、こんな感じ?」
「え?」
「あたしに接するみたいに、柚さんにも接してる?」
何を訊かれているのか、よく分からない。
深い意味があるのか、ただ単純にそう言っているだけなのか。
思惟は掴めない。
翠と同様、美鈴さんも掴めない人だ。
少し違う意味で、だけど。
「……そう、ですね。しいて言えば敬語を使わないってくらいです」
うまい言葉が見つからない。
どんな顔をしたらいいのかも分からない。
動揺する頭を落ち着かせようと買ってきてもらったアイスティーを口にする。
そして美鈴さんは、呟くようにこう言った。

