だってそれって、この子は自分のだっていう証拠?なんだもん。


……付けられたことがない私は憧れの気持ちがどんどん膨張していく。


「そ、そっか。でも、人それぞれだから気にしないほうがいいよ」


首筋に髪を寄せながら微笑んでくれる篠原さん。

なんだか今日は、真菜にも篠原さんにも慰めてもらっている。



「あ、だったらこういうのは?」

「え?」



手招きをされ傍に行くと耳元で囁かれた。

恋愛アドバイスとも言える、篠原さんの提案。



「ちょっとは何か変わるかも、だよ」


「……じ、実行します!」



これくらいなら私でもできること。

篠原さんにお礼を言っていると、部活の呼び出しがかかって早足で目の前から去って行く。


……自分で踏み出さなきゃ何も変わらない。


うん。そうだよ。

彼を好きなら、そういう態度を示せばいいんだ。



ねえ、もっと近づけるかな?

この曖昧な距離を、少しずつでもいいから縮めていきたいな。




「……頑張ろ、う」



小さく吐きだした決意は、温かい風の中に溶けていった。