ていうか、僕が二人分まとめて払えばよかった。
ただ映画を見に来ているだけとはいえ、女の人に二人分払ってもらうのは立て替えでも悪いような……
「いいの、いらない」
「え?いや、大丈夫ですよ。それくらい持ってますから」
「……そうじゃなくて、本当にいらないわ」
「でも、」
「あたし、呉服屋の一人娘なんだから」
うまく話を逸らされてしまった。
恐らく、僕に遠慮してお金を出してくれたんだろう。
今日誘ったのは自分だから、とか、この映画を希望したのは自分だから、とか……
それくらい、いいのに。
そもそも僕だって嫌だったら入る前に拒否するし。
分かってない、なあ。
チケットに表示されていたCINE2へ入ると、席は半分くらい埋まっていた。
できるだけ真ん中に近い席に座り鞄を足元に置く。
「あたしジュース買ってくるけど、碧君何がいい?」
「じゃあアイスティー……って、あ、僕が買ってきます」
「ううん。ジュース選びたいし、あたしが行くわ」
と、またもやうまく交わされてしまう。

