クロスロード


「美鈴さんって、恋愛映画好きなんですか?」



今日は意外だ、と思うことが多い日だ。


泣ける純愛映画としてヒットしているこの作品は、評判もいいしクラスでもよく名前が挙がっている。

それなら見てみたいなあ、と思っていたのは事実。

けど、美鈴さんもこういうの好きだったりするんだな。



「碧君はあたしにどんなイメージを抱いてるのかしら」

「あ、いや、……はは」



笑いで言葉を濁す。

美鈴さんはさっきのように不満そうな顔をしたけど、気を取り直したのかチケットを買いに小走りになった。

当然、腕を組んでいる僕の身体もそっちへ傾く。

そのままの体勢で行ったせいか受付のお姉さんの視線が痛い。


……恥ずかしい。


今まではこういうのを見ている側だったのに。

人生って何があるか分からないな、と一人感心してしまう。


「碧君、学生証貸して?」

「あ、どうぞ」


財布からそれを抜き取り渡す。

受け取った美鈴さんは自分の学生証と共に僕のを提示していた。

やがて学生証と同時にチケットを渡される。

はい、と渡されて始めて、違和感に気づいた。



「あ、すみません。僕の分の払いますね」