「着いたわ」
「え、あ」
美鈴さんの声ではっと我に返る。
いつの間に着いたんだ……考え事してたから全然気づかなかった。
結局行きたい所ってどこなんだろう。
そう思いフ、と顔を上げると、頭上に大きいポスターが数枚張ってる場所だった。
「……映画館、ですか?」
「そうよ」
「……なんか意外ですね」
「ふふ、どういう意味?」
やばい、口に出ていた……
別に変な意味じゃないけど、美鈴さんと映画はあまり結びつかないな、と思ったのだ。
何ていうか、高級そうなカフェとかが似合う気がする。
「あたしだって映画くらい見るわよ」
むすっとした顔をした彼女につい笑みが零れる。
お金持ちのお嬢様、というブロックが少し崩れるような顔。
……でもその方が、一緒にいて違和感がない。
「はは、すみません。で、何見るんですか?」
「アレ」
そう美鈴さんが指さしたのは、真ん中にどどんと張ってあるポスター。
今流行っているらしく、流行に疎い僕でも知っている名前だ。
でも、確かこれって……

