柚の行きたい所ならなんとなく分かるけど、美鈴さんは予測不可能。
元々繁華街にあまり行かない僕はどこを目指しているのかすら分からない。
美鈴さんが僕の腕を引いて歩いている途中、すれ違う人々はみんな彼女に注目していた。
まわりから聞こえてくる絶賛の声。
確かに、彼女は一際目立つ存在だ。
すらっと長い手足に小さい顔。恐ろしいほど整った顔立ち。ぱっちりな二重。
身長だって平均以上は余裕にあるから、僕と身長差があまりない。
高校時代も目立ってたみたいだしな――……
『知ってるってか有名人だろ!一つ上の先輩でずば抜けて綺麗だった人だって』
あーちゃんに言われるまで知らなかった事実。
そんな凄い人と一緒にいる僕って……
『柳澤美鈴っつったらそこらのモデルより美人だろーが。うちの学校のヤツが何人告ったか知ってるか?』
「……、」
こく、はく
その単語が脳内を駆け巡り、あの日の出来事を具現化させる。
――美鈴さんとファッションビルで会った時、去り際に彼女はこう告げた。
『あたしが告白したら、どうするの?』
正直、分かりません。
……きっとあの日、僕はこう思っていただろう。
実際あやふやで、確かなモノなどどこにもない。
長い間違う人を想い続けていた僕が、短期間で別の人を好きになれるのだろうか。

