「……あ、の、翠君。ホテルって……?」
ちょ、ちょっと待って。落ち着いて整理しよう。
今日は峰さんのお家に行くだけのはず。
当然のように私は、峰さん家を出たら行きと同じ交通手段を使って帰るものだと思っていた。
例え交通手段が違っても帰る場所は麻生家の敷地だと――
なのにこれって、どういうことだろう。
「父さんが部屋取ってある」
……まさか。
『父親が手配してくれていますので』
この言葉の意味は、ホテルを取ってある、ってこと……!?
そんなこと彰宏さんから聞いてない。
もしかして……私に秘密でこうしてくれたのかな。
きっと彰宏さんは翠君だけに伝えたんだ。
それにしてもこの状況どうすれば……っ
「っわ、私、泊まるほどのお金持ってないよ!?」
不安が募り、飛び出してきた言葉はお金の心配だった。
どこまで庶民なの私!
「クレジットカードあるから」
「……そ、そうだったね」
ちなみに私、クレジットカードなんて使ったことありません。

