的外れな言葉にポカンとなる頭。
い、いきなりどうしたんだろう。
そんなに歩きたくなかった……?でも駅に行かなきゃ電車に乗れない。
まさかここからタクシーで家まで帰る?
電車で1時間弱かかるんだし、それじゃあタクシーの料金凄いことになっちゃうと思うんだけどな。
翠君には翠君なりの意見がある……とか?
なんてことを考えている内に翠君は携帯でタクシーを呼んでいる。
多分、アドレス帳にタクシー会社の番号が入っているんだろうな。
……さすが本家の息子さんだ。
1分もしない内にタクシーが着き、開かれたドアに乗り込む翠君の後を追う。
パタン、と閉められたドア。
「どこまで行きますか?」と、運転手さんの声に彼はこう答えた。
「オリエンタルホテルまで」
「……え!?」
「かしこまりました」
簡潔な答えと共に発車するタクシー。
隣に座る翠君は景色を見ているのか窓から目を離さない。
私だけが、この状況を把握していないのだ。

