「良かったわ柚ちゃん!本当に大丈夫?」
「は、はい。すみません、なんか……」
まさか人様のお家でこんなことになるなんて。
申し訳ないわ恥ずかしいわ、で今すぐ消えたい気分になる。
がっついてむせるなんて、恥ずかしいことこの上ない。
しかも翠君と一緒にいる時にこうなるとは……
もしここにお父さんがいたら呆れちゃってるだろうな。
「あ、じゃあ……私もそろそろ失礼しますっ」
ブレザーを着て鞄を手に持ち、静かに席を立つ。
おばさんは「寂しいわあ、また来てね」と言いながら私達を玄関まで案内してくれるようだった。
ダイニングを出る際、例の婚約祝いは鞄にこそっと詰め込んだ。
なんか翠君の前でしまうのは恥ずかしくて。
……中身が中身だしなあ。
「それじゃあ、御世話になりました」
広い玄関。
おばさんに挨拶をして頭を下げる。
結局、何から何まで出してもらっちゃって悪かったよね。
今度来る時はお土産にお菓子でも持っていきたいな。
「うふふ、今度は碧君も連れてきてね」
「っあ、はい!」

