クロスロード


「だ、だいじょうぶで……っぅ」


ダンダンッと自分の胸を叩いてケーキを流し込む。

無理矢理がっついたのがいけなかったな……

何回か叩いていたけど、一向によくなる気配がない。


な、なんか呼吸が苦しくなってきた……っ


そんな、時


「っえ」


叩いていたほうの腕を掴まれ、代わりに背中に触れる冷たい温度。

そして覗きこまれる顔。

近距離で視線が絡まった瞬間、顔中の熱が頬に集まった。



「ちゃんと呼吸して」

「っあ、う、……」



――背中を擦る手が、優しい。

苦しくて咳き込む私を覗き込む目が、身体全体を支配する。

とくんっと脈が大きく反応し、ろくに言葉が出てこない。



……いつの間にか普通通り呼吸できるようになっていた。



「あ、りがと……」



私から離れた翠君にお礼を言ったけど、彼は既に私の方を見ていなかった。

それよりもブレザーを着込み、帰る準備をしている。