「心配いりません。大丈夫です」
「そう?」
「父親が手配してくれていますので」
「あらあ、さすがねえ」
楽しそうに笑うおばさん。無表情の翠君。
残された私は頭にハテナが増えていく。
……彰宏さんが、手配してくれたって……
と言うことはお迎えに来てくれる車があるのかな。
私達の家から一時間弱かかるから、私まで乗るのは悪い気がするなあ。
そんな考えを侍らしていると、ガタッと翠君が席を立った。
「けど、そろそろ帰ります。長時間すみません」
そう言いながら椅子にかけてあったブレザー、床にある鞄を手に持つ。
えっ、やば、まだケーキ食べきってない!
高級ケーキを残すなど私にはできないため、もぐっと口の中にケーキを押し込んだ。
……うん。美味しい。これどこのチーズケーキなのかな。
いやでも、場所を聞いたとこで買える値段じゃないと思うから敢えて聞かないようにしよう。
――しかし、
「あらやだっ、柚ちゃん大丈夫?」
勢いよく押し込んだせいか、ごほっとむせてしまった。

