おばさんが出してくれた『夕飯』というのは、私から見ればホテルのディナー並みのご馳走だった。
リビングからダイニングに移動し、長いテーブルの上に並ぶ数々の料理。
名前だけしか聞いたことないフォアグラも登場し、くらっと眩暈がしてしまった。
ど、どうすればいいの……ご飯代出したほうがいいよね!?
ざあっと財布の中身を計算するが、とてもこのご馳走に匹敵するほどの金額は持ち合わせていない。
申し訳なくて暫くジッとしていたけど、おばさんに勧められて頂くことになった。
……こんなことなら制服じゃなくてちゃんとした礼服で来るべきだったかな。
チラ、と隣にいる翠君を見れば、華麗にナイフとフォークを使いこなしご馳走を食べている。
本家は和が基本なのに、テーブルマナーまで身につけている翠君は流石だなあ……
反対に私は全くうまく使いこなせず、カチャカチャと音を立ててしまう始末。
テーブルマナー、覚えておけばよかった。
「あら、もうこんな時間なのねえ」
食後のデザート、ケーキを頂いているとフイにおばさんが口を開く。
ダイニングの柱時計は19時半を指していた。
こんな時間経ってたんだ……言われるまで全然気づかなかった。
「そろそろ帰ったほうがいいわよね?遅くなっちゃうと悪いし……」
心配そうに私達を見るおばさん。
一応電車は0時近くまであるし、明日は学校休みだから遅くなっても大丈夫だけど……
翠君はどうなんだろう。
私が答えるより翠君が答えたほうが適切だよね。
そう判断し口を結んでいると、ナプキンで口を拭いた翠君がおばさんに顔を向けた。

