クロスロード


でも、まさか翠君も想像はしてなかったよね。

婚約祝いにベビー服をプレゼントされるなんて。


……妊娠祝いならいいと思うけど……



「うふふ、柚ちゃん。照れなくていいのよ」



いえ、照れてないです……

おばさんには焦り顔が照れたように見えたみたい。

もう何も言えなくて苦笑いを浮かべるしか方法はない。

とりあえずもう一度お礼を言い、頂いた箱を隣へ置いた。



果たしてこのプレゼント、使う時は来るのかな……

未来のことなど誰にも分からないけど、今の状況が続けばずっと使わない、のかもしれない。


今、翠君と一緒にいれて嬉しいけど

彼が同じように想ってくれてるとは限らない。

私だけが舞いあがっていることもあり得る。

実際、女の子の電話の件もあるんだし……


「っ、」


そう、だった。

私は上辺上、カタチだけの『婚約者』

本物の奥さんじゃないし、籍も入れてないんだから彼を問い詰めることもできない。

というか、聞く勇気がないだけ。


彼が私のこと、本当はどう思っているのかも聞けない―――……


「あ、そうよ。せっかく来てくれたんだし、夕飯食べてってね」


ニコリ、とおばさんが笑顔を向けてくれたけど

どういう反応をしたらいいのか分からなくて、曖昧な笑顔を見せてしまった。



そんな私を翠君が見ていたことに、気づかないまま。