私は改めて思い知った。
翠君と私は、住む世界の環境が違いすぎるということを。
彼は駅で電車の切符を買う時にもクレジットカードを出してくれた。
有難いけど気持ちだ受け取っておいた。
人混みをぼんやり眺めている彼の腕を引き、発車ギリギリの電車に乗り込む。
『指定席はどこ』と言われ『で、電車に指定はないと思う……』と心細く返事を返す。
小一時間、電車の旅を終えた私達は再びバスに乗り込み峰さん家を目指した。
峰さん家に着いた時、既に空には夕焼けが広がっていて。
思ったより時間かかっちゃったなあ、と声に出さず心で呟いた。
そんな私に彼は
『タクシーで来れば乗換なくていいと思うんだけど』と、例の無表情で言葉を放ったため
私は何も言えなくなってしまったのだった。
「まあーっ、翠君、柚ちゃん、久しぶりねえ!」
現在、なんとか着いた峰さんの家でお茶を啜っている。
峰さんの家はおじさんとおばさんの二人暮らし。
息子さん達は遠方に住んでいるらしく、家にはもういないみたい。
前に来たのは何年前だったかな。もう10年くらい遡るのかもしれない。
さすが麻生家の親戚というか、家の内装も本家に劣らないくらい広かった。
何人かのお手伝いさんが翠君と私を誘導し、30畳はあるであろうリビングに案内してもらった。
「ご無沙汰してます」
翠君は無表情だけど、同い年とは思えない大人な交わし方をする。
やっぱり翠君は凄いなあ。
私なんか緊張しすぎてうまく言葉が出てこないのに。

